唐辛子は16世紀頃に日本に伝わったといわれており、その時代から現在にいたるまで日本人の食事には欠かせない食材として親しまれてきました。
日本でよく使われているのは鷹の爪ですが、トウガラシ属には他にも数十もの種類が確認されています。今回は世界各地で栽培されているトウガラシ属の中でも、特に代表的な種類をご紹介していきます。
唐辛子の歴史
トウガラシ属の原産地は中南米です。中南米のトウガラシが世界中に広まっていったきっかけは、15世紀の大航海時代の到来だといわれています。
当時のヨーロッパでは胡椒をはじめとした香辛料が非常に珍重されており、香辛料を求めて他の大陸へ行く大航海時代が始まったとされています。新大陸を目指した航海でコロンブスが南アメリカで栽培されていた唐辛子を発見した後、まず故郷のヨーロッパへと唐辛子を持ち帰りました。その後唐辛子は大航海時代の流れに乗るように、世界中へと広まっていったのです。
この記事では各国・各地で育てられている品種をご紹介しますが、本来の意味の”原種”という意味ではすべてが南米原産となりますのでご了承ください。
トウガラシ属の主な種類
トウガラシ属はナス科の属の1つで、数十種あるとされています。分類方法は研究者の間でも学説が分かれていて、栽培品種ともなると数百を超える品種が存在します。
トウガラシ属の主な種類としては、以下のものが挙げられます。
・トウガラシ(ピーマン、パプリカ、鷹の爪、ハラペーニョなど)
・アヒ・アマリージョ
・ウルピカ
・シネンセ種(ハバネロ、キャロライナ・リーパーなど)
・キダチトウガラシ(島トウガラシ、プリッキーヌなど)
・ロコト
さすがに数百種類以上をすべて解説はできませんので、これらの中から地域別に代表的な品種をご紹介していきます。 唐辛子の品種一覧を見たい方は以下のページも参考にしてみてください。
中南米の唐辛子
中南米は唐辛子発祥の地なだけあって、多くの種類の唐辛子があります。中でもハバネロやハラペーニョは、日本でもよく知られている唐辛子ですね。
ハバネロ(ユカタン半島)
ハバネロの起源は、メキシコがあるユカタン半島、もしくはカリブの島々と言われています。ハバネロは辛いだけではなくフルーティーな風味を持っているところが最大の特徴です。このため肉料理やカレーととても相性が良く、料理に深みを与えることができる点が人気となっています。
辛さ世界一のギネス記録を長期間保有していたことからもわかるように、かなり辛い唐辛子です。鷹の爪の感覚で食べるととんでもないことになりますので注意しましょう。
ハラペーニョ(メキシコ)
メキシコの唐辛子でもう一つ有名なのが、ハラペーニョです。ハラペーニョは青唐辛子で、発祥地であるベラクルス州のハラパが名前の由来だとされています。
ハラペーニョはあまり辛味が強くないのが特徴で、実の形は細長くて肉厚です。収穫は実が青いうちにされ、ハラペーニョソースは緑色のタバスコの原材料としても有名です。他の唐辛子の仲間と同様に、熟すと実が赤くなります。
メキシコでも食べられていますが、アメリカでは「唐辛子と言ったらハラペーニョ、ハラペーニョと言ったら辛いもの」のレベルで普及しています。日本人にとっての鷹の爪的な感覚ですね。
ウルピカ(ボリビア、ペルー)
ウルピカは、南米ボリビアで採れる唐辛子の一種です。実は丸い形で完熟前は緑色、完熟すると赤くなります。さくらんぼのような外観が一番の特徴ですね。
食用として用いられているのは緑色の状態のものがメインです。「そのまま口に入れるのは危険」と言われるほどの強烈な辛さを持っています。
アヒ・アマリージョ
アヒ・アマリージョは南米アンデス地域で用いられ、ペルー・ボリビア・チリの料理によく使われています。現地の市場では生の実の他にも乾燥させたものや、粉末状・ペースト状にしたものなどが売られています。
ロコト
ロコトは綺麗な紫色の花が特徴で、インカ帝国の時代よりも更に古くから栽培されていたとされています。ロコトペッパーとも呼ばれています。
セラーノ・デルソル
「セラーノ・デルソル」はハラペーニョに似た唐辛子ですが、ハラペーニョよりも辛味が強くなっています。ハラペーニョよりもやや小ぶりな実をつけるのが特徴です。
アジアの唐辛子
中南米以外でも、もちろん様々な唐辛子が栽培されています。他にもアジアや北アメリカの唐辛子も見てみましょう。
プリッキーヌ(タイ)
東南アジア、主にタイでよく使われているのは「プリッキーヌ」という唐辛子です。トムヤムクンなどのタイ料理に使われているのがこのプリッキーヌです。
名前の由来は「prik kee noo(ネズミのフン)」からきているといわれており、その名の通り長さ2、3cmほどのとても小さな実となっています。プリッキーヌはとても強い辛みを持っているのが特徴です。日本の島とうがらしとほぼ同一の品種と言っても良いでしょう。
ブート・ジョロキア(インド・バングラデシュ)
ブート・ジョロキアは、北インドやバングラデシュで栽培されています。
2007年にはハバネロを抜いてギネスで「世界一辛い唐辛子」として認定された実績があります。その後は別の唐辛子に抜かれてしまいましたが、確かな辛さを持っています。
実は熟すとオレンジや赤色となり、表面はざらざらとしています。
鷹の爪(日本)
説明するまでも無いと思いますが、いわずとしれた日本の唐辛子です。
勘違いされている方も多いと思いますが、鷹の爪は唐辛子の別名ではなく、唐辛子の品種の一種です。詳しくは以下の記事に記載してありますので、是非参考になさってください。
ヨーロッパ・北アメリカの唐辛子
キャロライナ・リーパー(アメリカ)
キャロライナ・リーパーは、2013年に「世界一辛い唐辛子」としてギネス世界記録に認定された唐辛子です。その後はイギリスの唐辛子「ドラゴンズ・ブレス・チリ」にその座を奪われましたが、キャロライナ・リーパーの生みの親であるであるエド・カリーが「ペッパーX」を開発。世界一の栄冠を取り戻しています。
「リーパー」とは、大型の鎌を持った死神を意味します。キャロライナ・リーパーには鎌のように曲がった尻尾のようなものがあり、サウスカロライナで開発されたことと合わせて名前の由来となっています。
アメリカで開催された大食い大会でキャロライナ・リーパーを食べた男性が激しい頭痛を訴え、病院へ搬送された事故が知られています。
パプリカ(ハンガリー)
パプリカは辛味がありませんが、唐辛子の一種です。
パプリカの品種はヨーロッパのハンガリーが発祥地で、ハンガリーへ侵攻したオスマン帝国軍によって持ち込まれた唐辛子が、パプリカとなりました。ハンガリーは現在においてもパプリカの一大産地となっています。
ハンガリー料理は唐辛子を使用したものも多く、唐辛子の他にもパプリカもとてもよく使われます。ヨーロッパ発祥の料理の中では「ハンガリー料理が一番辛い」と言われているほどです。
唐辛子は世界中で愛されている
ここまでで紹介してきた以外にも、世界中で数えきれないほどの種類の唐辛子が栽培されています。その地域での郷土料理にも唐辛子はよく使われており、辛さや風味も様々です。
またギネスによる「世界一辛い唐辛子」の座が何回も更新されているように、辛い唐辛子の開発に情熱を燃やす開発者もいます。激辛料理を食べる時は病院送りにならないように気をつけないといけませんが、海外旅行に行く際には各地の唐辛子料理を楽しんでみたいですね。