シシトウガラシ(獅子唐)

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スコヴィル値
0 SHU
原産地 日本

獅子唐はその豊かな風味と多様な調理法によって古くから日本料理の中に息づいてきた、日本原産のトウガラシです。基本的に辛さはまったくありませんが、時折ビックリするほど辛いものに当たることがありますよね。今回は「食のロシアン・ルーレット」とも呼ばれる獅子唐の秘密に迫りましょう。

名前の由来は?

シシトウガラシの名前の由来は、その外見です。

一般的な獅子唐は5〜10センチの長さでほっそりとしています。皮は薄く光沢があり、僅かにシワがあります。先の部分は多くのトウガラシとは異り、膨らみがあり、先端は平たくなっています。そしてそのシシトウガラシの先端が獅子の頭(口の部分)に似ていることからこの名前が付いたと言われています。名前も正式には「獅子唐辛子(シシトウガラシ)」と言いますが、略称の「獅子唐(シシトウ)」の方が広く浸透しています。

シシトウガラシの辛さの理由は?

獅子唐はナス科トウガラシ属に属しますが、その中でも甘トウガラシ(唐辛子甘味種)と呼ばれる辛味を持たないトウガラシの一種です。アメリカではこうした品種はスウィート・ペッパーと呼ばれ、ピーマンやパプリカなどもこれに属します

獅子唐は独特な香りを持ち、その風味は僅かに燻したような苦味と甘味があります。一般的な獅子唐のスコヴィル値(辛さを表す数値)は、四捨五入するとパプリカと同じく0 SHUなので辛味は全くありません。ですが、先ほど述べたように獅子唐には時期によりますが5〜20個に1個の割合で辛いものが混ざっていると言われます。辛い獅子唐ができるのはなぜなのでしょうか?

その理由はストレスです。人間は過酷な状況下にあると緊張や防衛本能で身が固くなり、意識もトゲトゲとしてきますよね。トウガラシも人間と同じでストレスを感じやすく、高温や極度の乾燥など、生育の過程で負荷がかかればかかるほど辛味が増すのです。ちなみにシシトウガラシと真逆の激辛トウガラシを栽培する場合、非常に高い負荷を与えることによって辛味を人為的に増すことをしています。

獅子唐の旬は6〜9月ですが、特に気温が25℃以上になると辛味成分が激増すると言われているので、熱帯夜が続く8〜9月頃は辛いものに当たる確率も高まることが多いです。また、生育日数が長ければ長いほど辛味成分が蓄積されていくので、収穫までの期間の長さによっても辛さに違いが出てきます。外見で見分けるのは難しいですが、形がいびつなものや中の種が少ないものは辛味が強いことが多いです。

シシトウガラシにも種類がある

獅子唐には、通常の獅子唐の他にいくつか種類があります。

伏見甘長ししとう

江戸時代から京都の伏見地区で栽培されてきた品種で、「伏見甘」とも呼ばれています。通常の獅子唐よりもサイズが大きくて細長く、大きいものだと15センチほどになります。果肉は柔らかく独特の風味と甘味があり、伝統的な京野菜として有名です。現地では実の部分だけではなく葉も「きごしょう」と呼ばれ、煮物や佃煮にしておばんざいの一品として食べられています。旬は6〜9月です。

万願寺ししとう

…大正末期に貿易港として栄えていた舞鶴で、在来種の伏見甘長ししとうと輸入されたカリフォルニア・ワンダーというピーマンの一種が勾配してできた品種とされています。その後、舞鶴の万願寺地区で栽培されるようになったことからこの名前が付けられました。サイズは大きく果肉には厚みがあり、肩の部分がくびれています。柔らかくほのかな甘味があり、種が少ないのが特徴です。こちらも京野菜として人気で、伏見甘長ししとうよりもふっくらとしているので詰め物にも向いています。旬は6〜8月です。

この他にも、万願寺ししとうの栽培期間を延ばし、赤くなってから収穫した「赤万願寺ししとう」や、伏見甘長ししとうと獅子唐の雑種が勾配してできたと言われる「ひもとうがらし」という10センチ大の細長い品種などがあります。

トウガラシの上手な調理方法

獅子唐は皮が薄く熱が通りやすいので、生で食べるよりも、加熱調理した時にその絶妙な味が一層引き立てられます。串に挿して軽く焼いて塩を振るだけで前菜になりますし、獅子唐の天ぷらも根強い人気があります。また、獅子唐はカロテンやカリウム、ビタミンCを豊富に含んでいるので、その栄養素を逃さないためにはごま油で強火でさっと炒めたりと短時間で加熱するのが一番です。ただし、獅子唐を丸ごと調理する場合は加熱中に破裂するおそれがあるので、切れ目を入れたり竹串で穴を数カ所空けるようにしましょう。

シシトウの選び方と保存方法

獅子唐を選ぶ際は、皮が鮮やかな緑色で張りがあり、ヘタがピンとしているものを選びましょう。また保存する際は、甘トウガラシ種は温暖気候で栽培される品種なので、低温で長時間保存すると傷みやすく、栄養素も減ってしまうので注意が必要です。乾燥しないように新聞紙で包んでからビニール袋などに入れて、冷蔵庫の野菜庫で10℃前後で保存するようにしましょう。4〜5日で使いきるのが望ましいです。

獅子唐はなかなか自宅で扱うには手を出しにくい食材のように思われるかもしれませんが、一度試してみると前菜からメインディッシュの添え物まで、その調理法と活躍シーンの幅広さに魅了されることでしょう。



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麻辣油は飲み物です。

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