50,000〜350,000 SHU
原産地 南米アンデス地方(ペルー・ボリビア)
ロコト・ペッパー(通称rocoto,locoto,Manzano等 学名:Capsicum pubescens)は世界で最も古くから栽培化されたトウガラシの一つで中南米、特にボリビアとペルーを中心に何千年にも渡って栽培されてきました。早くても5000年近く前からアンデス文明圏内で育てられていたと言われています。日本では聞き慣れないこのミニトマトやさくらんぼのような姿のトウガラシは、原産地であるペルーやボリビアにおいては一般的に流通しています。その外見と味の双方における独特な存在感によって、ロコト・ペッパーは古くよりペルー料理とボリビア料理には欠かせない食材となっています。現在では原産地の南米アンデス地域以外にも生息域を広げており、中米などでも流通しています。
外見
ロコトの実
ロコトの実は、トウガラシというよりもトマトやサクランボに似ています。サイズはゴルフボール大と小さく、収穫時にはブドウの房のようにたくさんの実がなります。色は赤、オレンジ、黄色の3色ありますが、特に赤いロコトが好まれるようです。果肉は非常に分厚く、実際に実をカットした時の断面や溢れ出る果汁もトマトそっくりです。その真っ赤で丸みを帯びた形から、メキシコではManzano(りんごという意味のスペイン語)と呼ばれています。
そして、このトウガラシの最も注目すべきポイントは、種が黒いことです。通常のトウガラシは白い種のものがほとんどですが、ロコトの属しているpubescens種のトウガラシのみダークブラウンか黒色の種を持っています。この一風変わったトウガラシは見ても食べても楽しめる品種と言えるでしょう。
ツリー・ペッパーと呼ばれる外見
ロコト・ペッパーは「プベッセンス(「毛深い」の意)」という学名を持っており、その名の通り植物は若い頃から茎や葉が白っぽく柔らかい毛に覆われます。植物自体もかなり背が高く育ち、他のトウガラシと異なり葉が生い茂るため、その様子から別名「ツリーペッパー」とも呼ばれています。小ぶりの美しい紫色の花を咲かせるこのトウガラシは、観賞用も兼ねた植物としても人気で、インカ帝国時代の首都でもあったペルーの都市・クスコでは、今でも多くの人が庭でロコト・ペッパーを育てています。
栽培
ロコト植物の栽培に関して特筆すべきは、このトウガラシが他の高いスコヴィル値を持つ品種に比べて涼しい気候の中で育つ点です。標高1500〜2000メートルのアンデス高地で育つことからも想像できるかと思いますが、ロコトには耐寒性があります。霜の降りない、気温10〜18℃ほどの環境で育てられるのが理想的とされています。果実をつけるまでに150日程度が必要で、一度果実をつけると10年は収穫できます。
辛さ
ロコト・ペッパーは中程度の辛さに分類されます。辛さを表すスコヴィル値は50,000〜300,000 SHU程度です。日本でよく見る鷹の爪が30,000〜50,000SHUと考えると結構辛いですね。
原産地であるアンデス地域のインディオはロコトをそのまま丸々使用すると辛すぎるため、唐辛子の辛味成分が凝縮されている部位である胎座(種子がくっついている白い部分)を外してから料理に使用することもあるそうです。
また、ロコト・ペッパーの実は主に赤、オレンジ、黄色の3色がありますが、その中でも黄色いものが一番辛味が強いと言われています。一般的にトウガラシは栽培期間が長ければ長いほど辛味成分が増し、成熟して赤くなった実が一番辛くなるものがほとんどなので、その意味ではロコトは珍しい品種と言えるかもしれません。
味
ロコトにはパイナップルを想起させるような新鮮なフルーティーさがあり、その風味は肉厚な皮の内側からあふれ出る果汁によって高められています。肉厚なのでパプリカのような食感をしています。
使い方
パプリカのような食感をしており、種子の入っている胎座を取り除けば生でかぶりついても美味しく食べられます。
ロコトはシンプルにスパイスとしてスープに入れたり、ペーストにするのも良いですし、ホットソースにするのもおすすめです。一番のおすすめはペルーの代表料理「ロコト・レジェノ」という肉詰めトウガラシです。中身をくり抜いたロコトに牛肉をふんだんに詰め、さらにその上にチーズをこんがり焼き付けたロコト・レジェノは、見ているだけでため息が出てしまいます。同じくペルー料理で有名な海鮮マリネの「セビーチェ」も絶品です。
そんなロコトの唯一の欠点は、果肉が肉厚で水分含有量が多いためドライペッパーにするのには全く適していないことです。
しかし生のまま美味しく食べられるトウガラシはほとんどありません。乾燥には向かないという欠点を補ってありあまる利点がロコトにはあると言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
もし、本場のペルーやボリビアを旅される機会があれば、ロコトでしか味わえないユニークな食体験を思う存分楽しんでみてください。