661,451 – 1,032,310 SHU
原産地 イギリス
ドーセット・ナガは、イギリスで生まれた奇跡の異端児です。ナガ・モリチの変種で、激辛トウガラシの可能性を開拓した品種であり、特に原産地のイギリス国内における爆発的な人気品種となりました。ゴーストペッパーの親類である2005年に生まれたこのトウガラシは、未だに世界で最も辛い品種の一つとなっています。
概要
ドーセット・ナガはイギリスのドーセットに住む、マイケル・ミショー夫妻によって生み出されました。
1980年台から野菜の種を販売する会社を起こしていた彼らは、次第にトウガラシに興味をもつようになり、94年にPeppers by Postというトウガラシ専門のブランドをはじめました。
多様なトウガラシを育て始めたものの、目玉商品として新たな激辛品種を開発する必要があると感じていた彼らはある時、イギリス国内でバングラディシュからの移民が日常的に激辛トウガラシのナガ・モリチを食していることに気づきました。そこで2人は移民向けの食材店でナガ・モリチの苗を見つけ出して買い、2002年から自身の菜園でナガ・モリチを栽培し始めました。
このオリジナルのナガ・モリチから最も出来の良い(辛い)サヤを選び、そこからさらに一番良い種をとって育て、その後も収穫の度に最良の種を選び抜いて育てる、ということを何度も何度も繰り返しました。
そして2005年、マイケルとジョイは収穫したトウガラシの一部をテストのためにアメリカのトウガラシ専門家の研究所に送り、スコヴィル値を計測したのです。そしてそのトウガラシは、それまでのギネス記録を大きく超える値でした。
さらに「ナガ」を名に持つトウガラシを含む激辛品種は、原産地であるバングラデシュのような暑い気候の中で栽培されるものがほとんどで、気温の低い環境で育つことは滅多にありませんでした。しかしドーセット・ナガはイギリスの涼しい気候で、グリーンハウスの中で育てられたのです。マイケルはBBC通信の取材に対し「私たちは大きな衝撃を受けた。なぜなら、こういうことは普通ありえないから。宝くじで1等が当たったみたいなものだよ。まさかイングランドのウェスト・ベキシントンの南海岸でこんなことが起こるなんて!」と語っています。
そして数年後、複数回に渡るテストを経て見事2007年ドーセット・ナガが誕生し、ギネス記録に登録されました。今ではイギリスのみならず、世界中で愛される品種となっています。
辛さ
ナガ・モリチと同様、ドーセット・ナガはインドの悪名高きゴーストペッパーと近い親類にあたります。激辛であることは周知のとおりですが、ドーセット・ナガは最高1,032,310 SHUのスコヴィル値を記録しています。これは、親であるナガ・モリチをも上回る辛さです。ハラペーニョと比較してみると、最も辛いハラペーニョと最も辛くないドーセット・ナガを比べた場合でも最低125倍は辛く、最も辛くないハラペーニョと最も辛いドーセット・ナガで比べると最大639倍も辛くなります。
見た目とナガ・モリチとの違い
親であるナガ・モリチとの違いは、当たり前ですがごく僅かです。実際にこの2つを隣同士に並べてみてもほとんどその差がわかりません。ドーセット・ナガはナガ・モリチよりも皮がほんの少しなめらかで、壁も僅かに分厚くジューシーであるという傾向があり、一方のモリチは表面のシワがドーセットよりも細かいので光沢は少し鈍く、複雑な表情を見せます。それ以外の味、形、そしてサイズはほとんど同じです。サヤのサイズは長さ5〜7.5センチ、幅は約3センチで、成長すると先が尖ってきます。
味と使い方
ドーセット・ナガ・ペッパーはギネスにも載ったその辛さに目を奪われがちですが、果実のような甘みもあります。
激辛なだけでもなく、風味もあるのでホットソース作りにも使えますし、マリネやスープに使用するのもおすすめです。ただもちろん入れる量は少しだけにするのをおすすめします。
また、ドーセット・ナガは激辛トウガラシですので、調理する際は最大限の注意を払う必要があります。ゴム手袋をするのはもちろんのこと、絶対にドーセット・ナガに触れた手で顔や目を触らないようにしましょう。
栽培
ドーセット・ナガの植物は少々変わった風貌に成長します。不格好とも言えるかもしれません。地面や大きめのプランターで育てた場合、その背の高さは約1.5メートル以上とかなり大きく育ちます。幹が地面に近い位置から枝分かれてくるので、成長して葉が付いてくると横にブワッとマントを広げたような形になります。
また、この植物は多産で一つの苗に大量の実を付けます。記録によると、ある植物は一株から合計781のトウガラシが収穫されたとのことです。