沖縄の飲食店に入ると、テーブルの上に必ずといっていいほど常備されているビン詰の液体調味料があります。ラベルには「コーレーグス」や「島とうがらし」と書かれていて、中身は液体と赤い唐辛子。この調味料は料理にほんのひと振りするだけで、ピリッと辛いうまみが加わるのが特徴です。
今回はこの沖縄の名物調味料「コーレーグス」について、基本的な情報と使い方などをご紹介していきます。
コーレーグスって一体何?
コーレーグス = 泡盛 + (島)唐辛子
「コーレーグス」とは、唐辛子を泡盛に漬け込んで作った沖縄の調味料です。
材料1:島唐辛子
トウガラシ属には様々な種類がありますが、沖縄および伊豆諸島ではキダチトウガラシの品種として、シマトウガラシ(島唐辛子)が栽培されています。コーレーグスを作る際には、この島唐辛子を使用します。島唐辛子は沖縄で古くから使われている唐辛子で、鷹の爪にはない香りの高さが特徴です。
必ずしも島唐辛子を使う必要はありませんが、やはり鷹の爪とは香りも異なりますので、手作りするなら島唐辛子がおすすめです。島唐辛子と同じキダチトウガラシの品種にはタイのプリッキーヌや、ピリピリなどの品種があります。島唐辛子が手に入らない場合はキダチトウガラシで代用しても良いでしょう(ただ国内で一番手に入れやすいキダチトウガラシは島唐辛子です)
材料2:泡盛
酒好きには解説不要だと思いますが、泡盛は沖縄で作られている伝統的な蒸留酒で、米焼酎の一種です。普通の焼酎よりアルコール度数が少し高め(30度)のものが多く、沖縄料理屋などで飲むことができます。
コーレーグスに使われている泡盛は25〜30度前後のものが多いです。
コーレーグスは島唐辛子と泡盛という、これら2つの沖縄古来の食材を用いたその土地ならではの調味料となっています。
コーレーグスの起源・語源
コーレーグスは元々は沖縄の方言で、唐辛子そのものを指す言葉として使われていました。しかし現在では「コーレーグス」といえば、上記の調味料を意味することが一般的です。
琉球國王府が編纂させた1713年の地誌『琉球国由来記』によると、唐辛子が沖縄に伝来したのは18世紀頃だとされています。同時に「高麗胡椒」も沖縄に伝わったとされ、この高麗胡椒が「(トウガラシそのものとしての)コーレーグス」の語源だと考えられています。
他にも「高麗草(コーレーグサ)」、「高麗薬(コーレーグスイ)」や「クース(古酒)」がコーレーグスの語源となったとする説もありますが、真相は定かではありません。
「島唐辛子を泡盛に漬けた調味料」としてのコーレーグスの起源については資料に乏しく、詳しいことは判明してしません。明治の時代にハワイに移り住んだ沖縄県民がハワイの「チリペッパーウォーター」という調味料を参考に作ったとする説、ブラジルへの移住者たちが現地の調味料(唐辛子を芋の汁に漬けたもの)を真似て作ったとする説が知られています。
沖縄では自家製コーレーグスも一般的
コーレーグスは水で洗って陰干しした島唐辛子を、泡盛に漬けておくだけで簡単に作れます。沖縄では一般の方々も家庭で作っているほどの定番の調味料です。
本来のコーレーグスは泡盛に漬けるのが基本ですが、沖縄以外にもコーレーグスが知られていくと、泡盛以外に漬け込んだものも登場するようになりました。
例えばお酢やクエン酸などに漬け込む作り方もありますし、島唐辛子をオリーブオイルに漬け込んだものはスパゲッティなどのパスタと相性が良く、タバスコ代わりのスパイスとしても使われます。酒類に漬け込んだコーレーグスはサラッとしていますが、オイルに漬け込んだものは粘り気が出るのが特徴です。
中身が減ってきたら継ぎ足してもOK
ビン詰めのコーレーグスを使って中身が半分くらいに減ってきたら、泡盛を継ぎ足して1日か2日待てば、またコーレーグスとして使えるようになります。
継ぎ足しを繰り返しているうちに中身の唐辛子の色が抜けて白くなってきたら、全体の取り換え時です。取り出した唐辛子は刻むなどして料理に使うとムダになりません。
コーレーグスの使い方・用途
コーレーグスの代表的な使い方は、何といっても沖縄名物「沖縄そば」の薬味です。沖縄そばに一振りかけるだけで、味に辛みと深い味わいが加わります。
沖縄の飲食店ではコーレーグスがテーブルに置かれているのが日常的な風景で、沖縄そばの薬味の他にも様々なメニューにかけたり混ぜたりして使われています。
沖縄そばの上に甘辛い豚のスペアリブを乗せた「ソーキそば」にも、コーレーグスの辛みがよく合います。
まずは一滴たらして様子見を
唐辛子の辛み成分である「カプサイシン」は、脂溶性のため油やアルコールに溶けやすい性質を持っています。このため島唐辛子を泡盛に漬けこんだコーレーグスにはカプサイシンの成分がとても豊富に含まれています。
コーレーグスはほんの少量たらしただけで辛みが格段にアップするので、慣れないうちは一滴ずつたらして必ず味見をするのがおススメの使い方です。
使用の際は慎重に
コーレーグスはサラサラしていて粘り気はないので、うっかりすると一度に多くの量をたらしすぎてしまう恐れもあります。コーレーグスは辛みが強いですし、アルコール分も入っています。酔ってしまうほどの量のコーレーグスを入れることは普通はないのですが、普段激辛料理が好きな方でも一度にたくさん入れすぎないように注意しましょう。
また小さなお子さんにとっては辛みもアルコール分も刺激が強すぎる恐れがあるので、どうしてもコーレーグスを入れたがる場合は大人がしっかり調整してあげるとよいでしょう。
「入れすぎた!」と慌てても、コーレーグスは液体なので取り除くことはできません。使用する際は慎重に取り扱うことが、コーレーグスで料理をおいしく食べるための秘訣です。