ブレア社の回し者というわけではないが、多くの人が言っている「コブラチリはデスソースの150倍、タバスコの1000倍辛い」というのは完全に間違い。
もちろんギネスに登録もされていない。
「ソース」が1,500,000スコヴィルと勘違いさせるパッケージ
後述するが、150万スコヴィルなのは原材料のほんの一部に使用しているキャロライナリーパーという品種のトウガラシである。ソースそれ自体では無い。こんな目立つ文字で「MORE THAN 1,500,000」と書いてあれば「これは1,500,000スコヴィルのソースなんだ」と勘違いしても仕方が無い。下に保護色のような色で「CAROLINA REAPER」と書いてあるが、これはミスリードを狙っているとしか思えないデザインではないだろうか。
※スコヴィル:辛みを感じるカプサイシンという物質の含有量を表す単位。
キャロライナリーパーを使用したソースは腐るほどある
コブラチリが原材料に使用しているトウガラシの品種「キャロライナリーパー」は確かに2016年6月の時点でも世界一の辛さであるが、原材料にキャロライナリーパーを使用しているからといってこのホットソースが世界一の辛さというわけではない。世界中でリーパーの栽培している現在では、リーパーを原材料に使用しているホットソースは珍しいものではない、というか腐るほどある。アメリカだけでも100種類以上あるのではないだろうか。
コブラチリはトウガラシではなくトマトをベースにしたソース
トウガラシはホットソース製造の工程で他の原材料と一緒に加工され、辛さが丸まっていく。コブラチリが世界一でない理由は原材料を見れば理解できると思う。日本、アメリカなど先進国では食品の原材料は使用量の多い順に記載せよと法律で定められている。
そしてコブラチリの原材料は「トマト、とうがらし、たまねぎ、砂糖、醸造酢、にんにく、食塩、クミン、黒こしょう」となっている。
つまりコブラチリはトウガラシよりトマトのが含有量が多い。そして「とうがらし」と謳っているだけであり、「キャロライナリーパー」以外のとうがらしを混ぜている可能性も有る。価格が安く、安定して供給されるハバネロ等を「とうがらし」の大部分に使用し、キャロライナリーパーを耳かき一杯入れただけで「キャロライナリーパーを使用」と記載しても嘘ではない。さすがにそこまではせずキャロライナリーパーだけを原材料に使用していると信じたいが、商品のパッケージからプロモーション画像まで一貫してミスリードを誘っている姿勢を見るに可能性は0とは言いがたい。真面目にやっている他社のホットソースの原材料には使用しているトウガラシの品種がきちんと記載されている。
——追記——
製造元のウェブサイトにはきちんと以下のように書かれていました。トウガラシのうち30%にキャロライナリーパーが使用されているようです。
Ingredients: Fresh Tomato, Fresh Carolina Reaper Chilli (30%), Onion, Sugar, Vinegar, Garlic, Sea Salt, Spices
商品説明に「辛さとフレーバーがどちらも同じくらいに味わえるように仕上げました」と書いてありますので、特段辛さを売りにしているわけではなさそうです。うーん、パッケージも日本と違うようですし、日本の販売代理店が独自のラベルに150万スコヴィルという記載を入れてミスリードを誘って煽ってるだけに思えてきました。
——追記 終——
他のホットソースと比べてみると分かりやすいかもしれない。
よく比較されているデスソースとの比較を見てみよう。
ブレアデスソース:オリジナル(10,000スコヴィル)
原材料:ハバネロ(赤、オレンジ)、酢、フレッシュカイエンペッパー、砕きにんにく、シポトレ、(以下略
こちらが10,000スコヴィルなのでこれの150倍辛いという計算をしているのだろう。コブラチリの原材料の一部であるキャロライナリーパーは確かにオリジナルデスソースより150倍のスコヴィル値であるが、加工後のソース(コブラチリ)が150倍辛いというわけではない。
ブレアデスソース:サドンデスソース(100,000スコヴィル)
原材料:ブートジョロキア、ハバネロ、醸造酢、食塩、酸化防止剤
ブレアのデスソースシリーズの中で、日本で販売されているもので一番辛いのは100,000スコヴィルのサドンデスソースだ。
ブート・ジョロキアは約1,000,000スコヴィル、ハバネロは約300,000スコヴィルなので、それらを主な原材料にした結果100,000スコヴィルのソースができたのは納得できる。
REAPER SLING BLADE(800,000スコヴィル)
原材料:トウガラシ(キャロライナリーパー、ブート・ジョロキア)、リンゴ酢、酢、トマトペースト、(以下略
こちらはアメリカのリーパーを使用したホットソースの中で最も有名なソースのうちの1つ、REAPER SLING BLADE。一番含有量の多い主原材料はもちろんキャロライナリーパーだ。このソースでも80万スコヴィル。トマトを主成分にしたホットソースでキャロライナリーパーの生の実と同じ150万スコヴィル(=デスソース・オリジナルの150倍)の辛さになるというのは無理がある。
まとめ
コブラチリは十中八九世界一辛いホットソースではない。原材料を見る限りブレアのサドンデスソースより辛いかと問われると「そうは思えない」と答えざるを得ないし、世界一辛いかと問われたら「99%違う」と答えるだろう。
製造元は辛さを売りにしているわけではなく、「辛さとフレーバーのバランス」を売りにしているようなのでサルサソースのような感覚で製造しているようだ。日本の販売店などがミスリードを誘い煽っているように見える。
あくまで感覚で結論づけているので、誰かがカプサイシン分析の検査に出すことを期待しよう。