家の目印として古くから使われてきた「家紋」には、実に様々な文様のものが知られています。有名なのは徳川家の家紋として時代劇「水戸黄門」でもお馴染みの、「三つ葉葵」の家紋でしょう。家紋には植物をモチーフとした文様もよく使われているのですが、唐辛子の文様を用いた家紋もあるのをご存じですか?
激辛料理ファンの方は、自分で唐辛子の家紋を作ってみるのも面白そうですね。そこでここでは唐辛子の家紋として主なものを、いくつかご紹介していきます。
唐辛子の模様が採用されている家紋の種類
家紋は古くから多くの家で使われてきただけあって、実に様々な文様の家紋があります。
唐辛子をモチーフにした家紋で知られている主なものは、唐辛子巴、三つ唐辛子巴、中輪に獅子唐辛子、丸に違い鷹の爪唐辛子、五つ唐辛子車、五龍胆唐辛などがあります。
これらの図柄は唐辛子の実を線や面で図案化したものとなっています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
「唐辛子巴」、「三つ唐辛子巴」
「巴(ともえ)」は、古代日本の装身具である「勾玉」に似た形の文様です。巴を使った紋は水が渦を巻いている様子にも見えます。このため平安末期には、火災避けの紋としても用いられました。
巴紋は勾玉状の模様の数・形状・向き等により、様々な種類の紋があります。勾玉の数により一つ巴(ひとつどもえ)、二つ巴(ふたつどもえ)、三つ巴(みつどもえ)のように数えられます。巴紋の中でも三つ巴の紋は、武神である八幡神の神紋として用いられてきた歴史があります。
唐辛子の実を文様として用いた「唐辛子巴」、「三つ唐辛子巴」は、唐辛子の実を勾玉に見立てて配置した家紋となっています。
「中輪に獅子唐辛子」
「中輪に獅子唐辛子」の家紋は、「獅子唐辛子」をモチーフとした家紋です。獅子唐辛子はいわゆる「シシトウ」のことで、熟して赤くなる前に収穫するので、店頭に並ぶタイミングではピーマンと同じように緑色をしています。
「中輪」は「ちゅうわ」または「なかわ」と読み、やや太い線で描かれた円の中に色々な文様を描いて家紋とします。「中輪に獅子唐辛子」では、中輪の中に大きな獅子唐辛子が1つ描かれているのが特徴です。
「丸に違い鷹の爪唐辛子」
「丸に違い鷹の爪唐辛子」の家紋は、黒い線の円の中に鷹の爪が2本交差して描かれています。鷹の爪はトウガラシ属の品種のうちの1つとして、日本ではとてもメジャーなものですね。
「違い」というのは2つの素材を交差するように配置した図柄で、羽や矢などが用いられた家紋がよく知られています。
「五つ唐辛子車」、「五龍胆唐辛」
「五つ唐辛子車」と「五龍胆唐辛」は同じ文様をしており、唐辛子の実を5つ中心から外に向けて並べた家紋です。
「車」の名のつく家紋は他にも色々とあり、どれも家紋全体が車輪に見えるのが特徴です。
また「龍胆(りゅうたん)」とは植物の竜胆(リンドウ)のことです。竜胆の文様は公家の時代から、家紋としてよく使われてきた歴史があります。竜胆を用いた「五つ竜胆車」という家紋があり、「五龍胆唐辛」はこの「五つ竜胆車」と同様の配置となっています。
家紋は勝手に作っていいの?
ここまで唐辛子をモチーフとした家紋をいくつかご紹介してきましたが、「自分も唐辛子の家紋を使いたい!」と思った唐辛子好きな方もいるのではないでしょうか。
名字や名前は法律や戸籍の下で管理されていますが、家紋には法的な根拠がありません。従って家紋を届け出る必要はなく、家紋は自分で勝手に作ってしまってもOKです。先祖代々受け継いできた家紋がある家も多いでしょうが、自分の代から好きなものを作ることもできます。
家紋を自分で作る時の注意点
自分で新たに家紋を作る場合は、既によく知られている家紋は避けることが大切です。
特に有名なのは天皇家の家紋である「菊の御紋」や、徳川家康や水戸黄門の家紋としておなじみの「三つ葉葵」があります。これらの他にも三井グループのシンボルマークである「丸に井桁三」や、キッコーマンの「亀甲」と「萬」を組み合わせたもの、鎌倉市の市章である「ササリンドウ」など、家紋を基にしたロゴマークが企業や団体でも用いられています。
家紋は元々「他家と区別するマーク」として用いられてきた歴史があります。世にある全ての家紋を調べて重複を避けるのはなかなか難しいですが、有名な家紋と紛らわしいものは避けるのが無難です。徳川家と何の関係もないのにうっかり徳川家の家紋と似たものを作ってしまい「徳川家一族の方ですか!?」と間違えられても、困ってしまいますよね。
また家紋を商標登録している事業所などもあり、こういったものと同じ文様になってしまうと法律上の問題が出てきてしまいます。自分で家紋を作る場合は、なるべくオリジナリティあふれる文様を作りたいですね。
激辛料理が好きな方は、唐辛子をモチーフに自分の家紋を作ってトレードマークとするのも面白そうです。子供たちにも受け継いでもらいたいならしっかり考える必要がありますが、自分で考えた唐辛子紋でキーホルダーを作って個人で楽しむ程度なら好きな文様を使えます。
唐辛子の家紋が入ったオリジナルの帽子やタオルなどを持って激辛料理を食べに行くのも、気分が上がるのではないでしょうか。