料理にピリッとした辛みをつけたい時に使われる唐辛子ですが、唐辛子を使ったメニューでも激辛なものもあれば、それほど辛くないものもありますね。これは唐辛子を使う場合は量だけではなく、切り方でも辛みの強さが変わってくるからです。
ここでは唐辛子の切り方の違いで、どのように辛さが変化するのかを見ていきましょう。
唐辛子の辛みの元は?
そもそも唐辛子はどの部位からあの辛さが発生するのでしょうか。「唐辛子は種が一番辛い」と昔から言われてきましたが、唐辛子の辛みの元は「種」ではなく「胎座」と呼ばれる部位であることが分かっています。
唐辛子を縦に半分に切ってみるとよく分かるのですが、実の中心部分に種がたくさん付いている部位がありますね。それが胎座となっています。この胎座で唐辛子の辛み成分・カプサイシンが作られているため、この部分を食べると強い辛みを感じることとなります。種を含む胎座の部分は「ワタ」と表現されることもあります。
「種が辛い」と言われていたのは、胎座のカプサイシンが種の表面にも付着して辛みを出していたからです。また「辛みをおさえたい場合は種を取り除けばよい」ともよく言われますが、これは種と一緒に胎座も取り除いていたため、辛みが減ったものと考えられています。
この胎座に辛さの元があるというのは唐辛子の辛さコントロールに必ず必要な知識となるので覚えておいて損はないでしょう。胎座からの遠い部分のカプサイシン含有量は少ないため、胎座から遠い部分の実が一番辛くないということです。
細かく刻むほど辛みが出る
なお唐辛子は細かく砕いたり刻んだりするほど、辛みが強く出てきます。
唐辛子の辛みは「カプサイシン」という成分なのですが、細かく刻むと細胞壁がより多く破壊されるので、カプサイシンが染み出しやすくなるのです。また細かく切れば切るほど、口の中で粘膜と接触する面積が大きくなるため、辛さを感じやすくなります。
このため切り方による辛みの強さとしては、強い順に
ペースト・粉末
みじん切り
輪切り
そのまま丸ごと
となります。
【ペースト】ペーストや粉末状にすると辛みが一番強くなる
ペーストや粉末状にすると細胞壁が非常に多く破壊されるため、カプサイシンの染み出しもそれだけ多くなって辛みが増します。上記の「胎座」ごとペースト・粉末状にすれば、非常に強い辛みが出ます。
またカプサイシンは揮発性が低く、気体になりにくい性質を持っているのもポイントです。この性質のため砕いたりミキサーにかけたりしても、辛さはほとんどそのまま残ります。
更にペースト・粉末状のものは口の中や舌の上で広範囲に広がりやすく、これも粉末状態が辛みを強く感じやすい理由の一つとなっています。
【みじん切り】細かく刻んでも辛みが強い
唐辛子は細かく刻むことでもカプサイシンの染み出しが多くなるので、辛みが強くなります。
辛さでいうとペーストや粉末の方が強いのですが、ペースト・粉末状だと他の食材に溶け込んでしまい、固形としての唐辛子の存在は分からなくなってしまいますね。
その唐辛子の辛さと食感を手軽にフルに活かしたいのであれば、みじん切りがおすすめです。ペーストにするためだけにフードプロセッサーを稼働させたりするのは面倒ですからね。
【輪切り】
ペーストやみじん切りなどは形は殆ど残らなくなりますが、その点点輪切りにした唐辛子を使うと、辛さだけでなく唐辛子の色や形などの見た目での楽しみも味わえます。輪切りにする際はキッチンバサミなどでカットすると綺麗な輪切りを作れて、見た目も更に良くなります。
輪切りにする時の辛さで注意するのは、先程も申し上げたとおり、胎座に近ければ近いほど辛いということです。鷹の爪系の細長い唐辛子であれば、先に根本から先までの真ん中で半分に切ってしまい、根本方面(胎座のある部分)を辛いものが好きな方へ、先の部分(胎座から離れている部分)を辛いものが苦手な方へという分け方をすれば、辛さの好みによる使い分けが可能です。なおこの切り方はハバネロ系の丸い唐辛子では難しいので注意しましょう。
【丸ごと】切らずに使用すると辛味をおさえられる
唐辛子を切らずに使用した場合はカプサイシンの染み出しが少なくなるため、切るのに比べ辛みをおさえることができます。
「辛すぎるものは苦手だけど少しだけ辛み・唐辛子の風味をつけたい」という場合には、唐辛子を切らずに丸ごとフライパンや鍋の中に入れて加熱しましょう。ただし長時間過熱し過ぎたり箸でつついて唐辛子が崩れたりすると、当然辛みが増してくるので注意が必要です。
市販の粉末調味料は、辛さが色々
唐辛子を自分でミキサーにかけるなどして粉末状にした場合は、辛みが強くなるのが一般的です。
しかしスーパーなどで売られている市販の粉末唐辛子の調味料は、味の好みによって自由に選べるように工夫されて作られています。唐辛子の品種の違いや他の食材も混ぜるなどして、激辛なものからマイルドなものまで辛さが様々に調整されているのです。
「普通の一味唐辛子のビンじゃ辛さがもの足りない」、「粉末のものを使いたいけどマイルドな辛さのものがほしい」といった場合は、市販の粉末調味料の中から自分好みの辛さのものを探すのがおススメです。
油に香りや辛みを移すには
パスタ料理などでよく使われる方法ですが、「オリーブオイルに唐辛子の香りだけを移したい」という場合もありますね。この場合も唐辛子を切らずにそのまま使います。
フライパンにオリーブオイルと唐辛子を入れて、弱火でゆっくりと過熱していきます。こうすると辛みはほとんど出ずに、香りだけをオリーブオイルに移すことができます。
ただし焦げてしまうと風味が悪くなってしまうので、唐辛子はこげ茶色になってきたら取り出しましょう。
オイルにも辛みをつけたい場合は、輪切りにして入れればOKです。カプサイシンは脂溶性なので油に溶けやすく、輪切りを入れる量によってそれだけ辛みが増していきます。輪切りの場合は入れすぎに注意してください。
カプサイシンは油の他にも、アルコールや酢にも溶けやすいことが知られています。基本的にはオイルと同じ要領で、辛さを移したくないなら丸ごと、辛さを移したいなら輪切りで漬ければOKです。