唐辛子を使った薬膳の効能は?

0

中国では「中医学」という、伝統的な医学分野があります。この中医学の考え方を活かし健康に役立てようと作られたのが「薬膳料理」です。

薬膳料理は人それぞれの体質・状態を重視して、身体が本来持っている自然回復力や治癒能力を引き出すことを目指した料理です。このため健康な方でも日常の食事に薬膳を取り入れている方も多く、健康ブームの日本でも薬膳に対する関心は年々高くなっています

ここでは唐辛子を使った薬膳の色々な効能についてご紹介していきます。

中医学の観点から見た唐辛子の効能

中医学の考えでは、食材には「五味」、「五性」、「帰経(きけい)」の効能があるとされています。唐辛子がどのような効能を果たしているのかを、以下で詳しく見ていきましょう。

唐辛子の五味は「辛味」

カイエンペッパー
「五味」とは「酸、苦、甘、辛、鹹(かん・塩辛さ)」に分けられ、味や作用を表します。唐辛子の場合は「辛味」に当たり、この分類の食材は「肺を養う」といわれています。このため呼吸や全身の水分を調節する役割を果たすとされます。
また身体を温めて血行を促進させる効能もあるため、風邪、冷え性、疼痛などに効果があると考えられています。
なお西洋医学では辛味は「味覚」ではなく「痛覚」として扱われることに注意しましょう。

唐辛子の五性は「熱性」

トウガラシイメージ写真
次に「五性」ですが、食材が持つ「体を温める、冷やす」という性質を5つに分類しています。
通常の温め方を「温性」、特に強い温め方を「熱性」、通常の冷やし方を「涼性」、特に強い冷やし方を「寒性」、最後に温めも冷やしもしないものを「平性」とし、「温、熱、涼、寒、平」の5つの分類となっています。
五性はその食材が「肝、心、脾、肺、腎」の臓器に与える影響を示します。

唐辛子には熱い(ホット)なイメージがありますが、この5つの分類の中でもイメージ通りの「熱性」に当てはまります。
熱性には身体を温める性質や発汗作用、更には新陳代謝の促進作用や痛みを止める効能もあるとされています。冬には冷え性改善としても使えますね。

唐辛子の帰経は「心、脾、胃」

中国人と赤色
帰経(きけい)」は、食材がどの内臓や部位にどのような作用をするかを意味します。
唐辛子の帰経は「」、「」、「」です。

具体的には、「心」は心筋の収縮力を高めて血液循環を良くしてくれます。
「脾」は栄養素を吸収する働きを良くし、むくみを和らげたり疲れにくい身体を作ったりといった作用があります。
「胃」は胃腸を刺激し消化を促進、食欲を増進させる効果があり、こちらは一般的な唐辛子料理のイメージともピッタリ合っていますね。

唐辛子の旬

薬膳は自然の効果を大切にするため、季節の旬の食材を積極的に取り入れます
唐辛子の旬は夏から秋にかけてとなっています。もう少し細かく分けると青唐辛子の旬は7月から9月、熟した赤唐辛子の旬は8月から10月頃になります。
この旬の季節に合った料理を食べることで、その食材の持つ効能を最大限に活かせるというのが薬膳の考え方です。

またカプサイシンは熱に強いため、調理の際に加熱しても損なわれにくいという性質を持っています。唐辛子が熱いスープや煮物にもよく合うのはこの性質のおかげで、辛みによる効能も過熱で失われることなく得られます。このため旬を外れた冬の時期でも、唐辛子を使った料理は好んで食べられているのです。

唐辛子の栄養成分を化学的に見ると

唐辛子の成分としては辛み成分であるカプサイシンが有名ですね。このカプサイシンは身体を温め、血行促進や血流改善の作用があります。
更に唐辛子はこのカプサイシンの他にも、ビタミンC、ビタミンE、βカロテンといった成分も含んでいます。
まずビタミンCは、風邪の予防に効果的であることがよく知られています。

唐辛子の美容効果

カプサイシン構造式
唐辛子に含まれるビタミンCには、疲労回復や肌荒れ予防という美容効果も期待できます。またビタミンEの抗酸化作用も、美肌に効果的なことで知られていますね。
カプサイシンには発汗作用もあります。汗をかくと毛穴に詰まっていた古い角質や汚れなどの老廃物も、汗と一緒に出ていきます。このように汗を適度にかくのは肌の健康のためにも良いことなので、カプサイシンも美肌に効果的とされています。
ただしかいた汗を全てそのままにしておくと、汗が蒸発する際に体温が下がってしまいます。冷えは健康によくないので、適切に汗を拭きとるように心がけましょう。

食べ過ぎは逆効果

唐辛子の場合は刺激作用もあるので、食べ過ぎてしまうと胃が荒れて灼熱感を引き起こします。辛い料理を食べた後に、胃が熱くなったように感じた経験がある方も多いはずです。この状態がひどくなると食欲不振、更には腹痛や吐き気、下痢も催してしまいます。

元々胃炎や痔などの病気がある場合は、唐辛子の成分の刺激で症状が悪化してしまいます。このような場合は、唐辛子を使った料理の摂取量には特に注意が必要です。

唐辛子に限ったことではないのですが、どんなに健康に良い食材でも食べ過ぎはよくありません。適切な量を食することで、唐辛子を使った料理を健康や美容に役立てていきたいですね。



About Author

辛い料理のレシピを考えてくださる方々に感謝!

Comments are closed.